私の修業時代 第35話 後の祭り
ここまでのあらすじ
1987年昭和62年に高校を卒業した私は、横浜の調理師学校へ入学し、スペイン料理店でアルバイトをしながら少しずつ新生活になれて来た頃には就職活動。不採用になったりいろいろ経験し無事に就職先も決定したのでした。
サテライトホテルヨコハマの菓子部門に入社し、時に悩みながら少しずつ成長?して行くのでした。
※私の修業時代は9年前に別ブログで投稿した記事を若干手直し修正しこちらに記録掲載させていただきます。登場人物の氏名は全て仮名です
練習のため一晩中、カラクケーキを焼き続け、焼き終わったケーキを並べながら洗い物や片付けをし、そろそろ終わろうかなと。
すると、
レストランの早番の朝食係が出勤して来た事で、、ハッとしまた、もうすぐ朝か!
取りあえず着替えやシャワーを浴びたくなりアパートに帰りました。。
シャワーを浴び服を着替え朝食代わりの缶コーヒーとトーストを食べてひと休み。暫くしてまたサテライトホテルに自転車で出勤しました。
ちょっとデスクで仮眠はしましたが、ほぼ徹夜明けのふわふわとした感覚でベーカーへ出勤すると、、
私が焼いたカラクケーキのばんじゅう(ケーキを入れる黄色いプラスチックケース)を見て、もう出勤して来ている伊南さんが、
『(大量)注文が入ってたかな?』と聞いてきました。
朝出しのケーキを作りながら、昨夜練習の為カラクを焼いたのを説明しました。
『え〜!全部焼いたの? ちょっと教えてもらいたかったな…。』と伊南さん。彼女は私と違って仕込みや焼き物は重たかったり火傷の恐れもあるので今だにケーキの仕上げ作業がメイン。なので仕込みやオーブンの仕事もチャレンジしたいようです。
草刈さんも出勤してケーキの朝出しに合流。浜田さんにベーカーからレストランに戻る辞令がでてから、私と草刈さんが慣れるため、意識的にペアを組む時間を作りはじめました。
『冨高君、こんなに焼いて何に使う…。』
『エッ、そっか!』草刈さんに言われ事の重大さに気づきました(汗)焼く事だけに一生懸命になり焼き上がったカラクの事を考えてもみませんでした!
もう後の祭りです!
1回で10台焼けるレシピを、、
10回以上繰り返し焼いたので100台以上は焼いてしまったんですよね…。
『冨高ーーー!!!』
100台を超えるカラクの前で、伊南さんから永江チーフと浜田さんが話を聞いて、浜田さんから大きな声で呼ばれました。
これは、もしかして入社式の失態以来の失態!?
ベーカー五人でカラクケーキのばんじゅうを見ながら今後の作戦を練りました。
『商品としては全部使えそうや。馬鹿かお前こんな焼いて…』と浜田さんから呆れられ品質をチェック。
『1日売れても10個程度のカラク。カットケーキにしたら1台から10個取れるから、、1,000個以上はあるね。』と伊南さん。
『展覧会の注文をカラクばかりにしょうか。』と草刈さん。週に1、2回山手の展覧会と言う喫茶店にケーキを卸していました。展覧会も全部チョコレートケーキはダメでしょうね。
『売店でカラクのホールケーキを半額で売って、クリスマスみたいにホテル従業員からも予約を取って買ってもらおうか…。』と永江チーフ。
『冨高!俺と宮脇で1台ずつ買ってやるから〜!
お前またやらかしたの、、』と田盛がレストランから面白そうな話しを嗅ぎつけやって来ました。
え?!皆んな冗談で言ってる!?
大変な事をやらかしたのか、、言葉が出ない私。
『1日1台分、カットケーキ10個売れば10日で売り切れるんじゃないですか?そんな簡単なものじゃ無いんですか…』怖る怖る聞いてみました。
そんな事を話してると、
『永江クーン、永江ーー!』ベーカーの厨房の横はガラス張りのシェフルーム。中から清水総料理長が呼んでいます!
遂にカラクケーキの件が総料理長に知れたのかも、、